【特集】2014 年末回顧―青木保

2014年12月24日 17:00 カテゴリ:その他ページ

 

 

東京という都市は実に忙しい。よくこれだけと思うくらい様々な展覧会や催事が開かれ行われている。博物館美術館を合わせると、国公私の文化施設でどれほどのことが行われているのか。おそらく想像を超えている。私など通知や情報に目を通すだけで、その多彩で多様なありように幻惑されてしまう。誰か、その実態を調べて芸術的、文化的、社会的、経済的などの多角的な観点から、総体論を書いてくれないか、と思う。取り組みがいのあるテーマだと思うがいかがであろうか。世界の大都市の比較論も面白そうだ。

 

国立新美術館の2014年は、それなりに盛り沢山、興味深い展覧会が行われた。先ず、全国の美術団体の成果を展示する公募団体展は、例年と同じく盛況であった。これは私にとっても大変うれしいことである。その活動は美の追求の社会的基礎である。昨年12月からの「DOMANI」展に引き続き「文化庁メディア芸術祭」が行われた。メディア芸術祭は17回目、当館で行われるようになって7回目であり、国際的な評価が確立されたといってよい。4部あるメディア芸術の各分野への応募も海外からのほうが多くなった。春には大阪にある国立民族学博物館収蔵の世界各地の文化の誇る逸品を600点ほど展示する「イメージの力」展が開かれた。アフリカやアジアなどの仮面や神像など迫力ある展示品の数々に強烈な印象を受けた。期待以上の評価であった。

 

また日本の誇るアブストラクト絵画のアーティスト、中村一美氏の個展も実に見ごたえのある現代美術展であった。夏にかけては「バレエ・リュス」展が開かれ、これもオリジナルの衣装がオーストラリアから来て、20世紀前半の芸術の華に浸ることができた。バレエが切り開いた総合芸術である。私などには見ているとバレエの名手の踊りだけでなくストラヴィンスキーの音楽が響いてきた。

 

夏から秋へはオルセー美術館展「印象派の誕生」そしてチューリヒ美術館展「印象派からシュルレアリスムまで」、近代名画の名作に直接接する機会はやはり貴重である。新美術館の広い展示空間で見るとパリでは幾度も見ているもののやはり新鮮な感銘を受けた。そして、12月には講堂の空間を使って「エレガンス不滅論。」が開かれ、文化庁の派遣研修において海外で研鑽した日本のアーティストたちの成果の発表会である「DOMANI」展が巡ってくる。芦田淳氏の50年のファッション・デザインの軌跡をたどる展覧会は、美術館としても画期的な催事であり、今後の方向を示す機会でもある。

 

来年の夏には、「ニッポンのアニメ*マンガ*ゲーム」展、韓国の国立現代美術館と組んだ日・韓現代アートの「アーティスト・ファイル2015」展が開かれる。多方面への充実した内容の企画を大胆かつ繊細に行ってゆきたい。「ニッポンのアニメ*マンガ*ゲーム」展はその後海外への巡回展を行う予定であり、国立美術館としては初めての国際巡回展となる。皆様の心からのご支援とご指導をお願いする。

 

 

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